列女傳卷二 楚於陵妻

出自

  • 楚の於陵子終の妻。

相への招聘を妻とともに退ける

  • 楚王は於陵子終の賢を聞き、相にしようと使者に黄金百鎰を持たせて招いた。於陵子終は「私には妻がおります、どうか入って相談させてください」と言い、家に入って妻に「楚王が私を相にしようと、使者に黄金を持たせて来られた。今日相を承知すれば、明日には四頭立ての車を連ね多くの供を従え、目の前に山盛りの食事が並ぶことになるが、それでよいか」と尋ねた。
  • 妻は「あなたは草履を編んで生計を立て、物事に無頓着に過ごしてきたわけではありません。左に琴、右に書物があれば、楽しみはその中にあります。四頭立ての車を連ねても、身を安んじるのに必要なのは膝を入れるだけの広さに過ぎません。目の前に山盛りの食事が並んでも、口に甘いのは一切れの肉に過ぎません。今、膝を入れるだけの安らぎと一切れの肉の味のために、楚国の憂いを背負い込むことがよいでしょうか。乱世には害が多く、わたくしは先生が命を保てなくなることを恐れます」と答えた。
  • そこで子終は使者に謝って招きを断り、夫婦して逃れ、人のために庭園の手入れをして暮らした。

  • 君子は於陵の妻を徳行のある人と評した。詩に「愔愔良人、秩秩德音」とあるのはこのことをいう。

史論

  • 頌にいう。於陵子終は楚に住んでいたところ、王が使者を送って招いた。家に入って妻に相談すると、妻は世の乱れによる憂いを懸念した。仕官して害に遭うより、身を安んじる方がよいとし、左に琴、右に書物を持って、人のために庭園の手入れをして暮らした。