高士傳卷三 漢濱老父

老父と張温の問答

  • 漢浜老父は、どこの人かわからない。桓帝の延熹年間(158-167年)、帝が竟陵に行幸し、雲夢を過ぎて沔水に臨んだとき、百姓は皆見物に出たが、一人の老父だけは畑を耕して手を休めなかった。
  • 尚書郎の南陽の張温はこれを不思議に思い、人をやって「皆が見物に来ているのに、老父だけが手を休めないのはなぜか」と尋ねさせた。老父は笑って答えなかった。
  • 温は道を百歩下って自ら老父に語りかけた。老父は言った。「私は野人で、この言葉はわかりません。お尋ねしますが、天下が乱れて天子を立てるのか、天下が治まって天子を立てるのか。天子を立てて天下の父とするのか、天下を役して天子に奉じるのか。昔の聖王が世を治めた時は、茅葺きの屋根と削らぬ椽の粗末な宮に住み、それで万民が安んじた。今のあなたの主君は、民を苦しめて自らをほしいままにし、遊興にふけって慎みがない。私はあなたのためにこれを恥じている。あなたはどうして人にこれを見せようとするのか。」
  • 温は大いに恥じ入り、姓名を尋ねたが、老父は告げずに立ち去った。