高士傳卷一 老萊子
出自と隠棲
- 老萊子は楚の人。世が乱れたため世を逃れ、蒙山の南で耕作した。莞葭の垣、蓬蒿の室、木の枝の床、蓍艾の敷物を用い、水を飲み豆を食べ、山を開墾して種を播いた。
楚王の招聘と妻の諫め
- ある人が楚王に彼を推挙し、王は自ら萊子の門を訪れた。ちょうど畚(もっこ)を編んでいた萊子に、王は「国政を先生に煩わせたい」と告げ、萊子は「承知した」と答えた。
- 王が去った後、山から戻った妻が「あなたはお受けになったのですか」と問うと、萊子は「そうだ」と答えた。妻は「酒肉で養われる者は鞭打たれ、官禄で扱われる者は刑罰にかけられると聞きます。私は人に制せられる身にはなりたくありません」と言い、畚を投げ捨てて去った。
- 老萊子も妻に従って江南に至って住んだ。「鳥獣の毛を紡いで衣とし、落ち穂を拾って食すれば十分だ」と語った。
- 孔子はその論を聞いて表情を改めたという。老萊子は道家の用を説く書十五篇を著し、その最期は知られていない。