十六国春秋前秦錄十 樊世

生涯

  • 樊世、本来氐族の豪族。健を輔けて関中を平定する大功があり、特進・姑臧侯を拝命したが、気位高く傲慢であった。王猛が寵愛され重用されると、勲旧の多くはこれを妬んだが、世は衆人の前で猛を「我らは先帝と共に事業を興したのに政権に与れず、あなたは戦功もないのに、どうしてあえて大任を専らにするのか、我らが耕したものをあなたが食べるようなものだ」と辱めた。猛は「まさに君に料理番を務めてもらうつもりだ、ただ耕作するだけでは済まないぞ」と応じた。世は大いに怒り「必ずやそなたの首を長安城門に懸けてやる、さもなくば私は生きていられぬ」と述べた。
  • 猛はこれを堅に告げると、堅は「必ずこの老氐を殺してこそ百官が粛正されよう」と述べた。折しも世が参内した際、堅は猛に「私は楊璧を娘婿に迎えようと思うが、璧はどのような人物か」と問うと、世は激しい調子で「楊璧は私の娘婿です、婚約はすでに久しく定まっております、陛下がどうしてこれを奪って自らの娘婿にできましょうか」と割り込んだ。猛は世を咎めて「陛下は四海を治める帝、あなたが婚姻を争うとは、これでは二人の天子がいるようなものだ、上下の別があろうか」と述べると、世は怒って猛に打ちかかろうとしたが左右に止められ、なおも汚い言葉で罵り続けた。堅はこれで激怒し、世を西の厩で斬らせた。