十国春秋卷四十五 前蜀十一 列傳 石潨

生涯

  • 石潨はもと唐の楽工であった。別号を石司馬といい、また「琵琶石」とも呼ばれた。石潨は若い頃、宰相令狐綯に賞(め)でられ、その諸子である渙・渢と、「水」の偏を連ねた名を付けられた。
  • 乱の後、蜀に来て、多くの顕官の家に遊び、賓客として遇された。ある夜、軍将数人と酒を飲んでいた際、石潨は琵琶を独壇場にしたが、座にいた者は音に通じておらず、まったく耳を傾けなかった。石潨は琵琶の槽(胴)を撲(う)って詬(ののし)り、「私はかつて中朝(唐朝)の相国に供奉していた者だ。今日、健児(兵士)どもと弾いても私の演奏を聴いてもらえないとは、なんと酷いことか」と言った。当時、事情を知る者はみなこれを歎き訝しんだ。