十国春秋卷十二 列傳 柳翁

柳翁

  • 柳翁は饒州の人である。常に小舟に乗って鄱陽江で釣りをし、妻子でさえその飲食する姿を見たことがなかった。山川の奥深いところや水中の生き物の類について、知り尽くさぬことはなかった。饒州の人で漁や釣りをする者は、みな彼に相談し尋ねた。
  • 天祐年間、呂師造が饒州刺史となり、城を修築し濠を掘ったが、城の北まで来ると雨が止み、工事を止めると晴れた。ある人が柳翁に尋ねると、翁は「この下は龍穴である。その土を揺り動かせば、龍が穴から出て雨を降らせるのだ」と言った。
  • それでも掘るのをやめなかったところ、長雨がまさに災いとなろうとした。まもなく、もっこと鋤が数丈の深さに達すると、その下から霧気が人を襲い、入ることができなくなり、果たして長雨が十日あまり降り続けて止まなかった。
  • 呂氏の息子たちが鄱陽江で網を打って魚を捕ろうとし、柳翁を呼んで尋ねると、翁は南岸の一箇所を指して、「今日はここにしか魚はいない。しかし小さな龍が一匹そこにいる」と言った。
  • この日、果たして大漁となり、舟の中で瓦器にそれを蓄えたところ、中に長さ二尺ほどの鱓魚(うなぎ)がいて、両目が澄み輝き、器の周りを泳ぎ回り、群れをなす魚たちがみなこれに付き従った。北岸に着こうとしたところで、その姿は忽然と見えなくなった。