人物志流業第三

  • 要旨: 人の業には十二の型があり、そのうち八業は徳・法・術の三材から分かれ、残る四業もそれぞれ固有の職能を担う。君主は一材に偏らず平淡に全材を統御し、適職へ配するべきである。

十二の業

  • 生来の性と後天の習慣が異なるため、人の業は十二に分かれる。清節家・法家・術家・國體・噐能・臧否・伎倆・智意・文章・儒學・口辨・雄傑である。
  • 各業の内容と代表者は次のとおりである。

  • 清節家は徳行が高妙で挙止が模範となる。延陵・晏嬰がこれに当たる。

  • 法家は法制を立て、国を強くし民を富ませる。管仲・商鞅がこれに当たる。
  • 術家は道の変化を考え、奇妙な策謀を立てる。范蠡・張良がこれに当たる。
  • 國體は徳・法・術を純粋に備え、徳で風俗を励まし、法で天下を正し、術で廟堂の勝算を立てる。伊尹・呂望がこれに当たる。
  • 噐能は三材を小規模に備え、徳で一国を率い、法で郷邑を正し、術で事宜を裁く。子産・西門豹がこれに当たる。
  • 臧否は清節から流れ、寛恕には乏しいが、好悪を明らかにして是非を分ける。子夏の徒がこれに当たる。
  • 伎倆は法家から流れ、遠大な創案には乏しいが、一官を任されて工夫を施す。張敞・趙廣漢がこれに当たる。
  • 智意は術家から流れ、恒久の制度を作れないが、変事に権を用いる。権智に余り、公正に不足し、陳平・韓安國がこれに当たる。
  • 文章は文章を構成して著述する。司馬遷・班固がこれに当たる。
  • 儒學は聖人の業を伝え道芸に明るいが、政務の実行には向かない。毛公・貫公がこれに当たる。
  • 口辨は道に深く入らないが、応対が敏速で豊かである。樂毅・曹丘生がこれに当たる。
  • 驍雄は胆力が衆を抜き、才略が人を越える。白起・韓信がこれに当たる。

君主の徳と適材適所

  • 十二材はいずれも一官を守る臣下の任であり、君主の徳はそこに含まれない。君主は聡明かつ平淡で、衆材を総合して通じさせ、自ら個々の仕事を引き受けない。目や耳が直接すべてを行わず各官に任せるように、上が無為なら下が職責を果たす。
  • 対応する官職は、清節が師氏、法家が司寇、術家が三孤、三材を純備する國體が三公、三材が微なる噐能が冢宰、臧否が師氏の佐、智意が冢宰の佐、伎倆が司空、儒學が安民、文章が國史、辯給が行人、驍雄が將帥である。
  • 君道が確立すれば臣道と官の秩序も整い、職掌を取り違えず太平が実現する。君主自身が平淡さを失い一材だけを好めば、その材が権力を独占し、他の材は任を失う。大工が規だけを用いて矩や縄を働かせなければ形を作れないのと同じである。