春正月〜六月 大赦と人事
- 春正月癸未、天下に大赦した。
- 六月、司徒の尹頌が薨じ、司空の韓縯が司徒となった。
貨幣改鋳の議と劉陶の反対論
- このころ、民が貧しいのは貨幣が軽いからだとして改鋳を求める上書があり、事は群臣と太学の士に下された。当時太学にいた劉陶らが議した。
- 鋳銭の詔が微賤な者にまで及び、貧しい者も遺されなかった。だから粗末な食で暮らす身でも敢えて意見を掲げ、罪を待って申し上げるのである。
- 思うに今の憂いはここにはない。民に飢えと労苦の怨みがあり、海内には目や耳を驚かす備えがないことにこそある。箕子が愚を装って答えたのと同じ気持ちで、自分は殷人の佯愚の思慮に及ばず、問われていないことまで申し上げようとしている。生を惜しみ死を嫌う気持ちから極諫はできないが、おおよそ民の生業について述べたい。
- 食は国の大宝であり、生きる民にとって最も貴いものである。近年、良い苗はことごとく螟や蝗の口に入り、機の杼は空になり、野に青草はなく、家は磬を掛けたように空である。急を要するのは朝夕の食であり、苦しいのは休みない労役である。銭の厚薄や目方の軽重の問題ではない。
- 今の議者は農耕の本に達せず、鋳銭の便宜ばかりを言う。中にはこれに乗じて詐りを働き国の利を売ろうとする者もいる。国の利が尽きようとすれば奪う者が争う。鋳銭の弊はここから生じる。
- 万人が鋳っても一人が奪えばなお足りない。まして一人が鋳って万人が奪うなら、陰陽を炭とし万物を銅とし、食わぬ民を使い飢えぬ士を働かせても、飽くなき欲望には足りない。
- 陛下は聖徳をもって海内の憂いを憐れみ、天下の難に心を痛め、銭を鋳り貨を整えてその厄を救おうとされる。だがこれは煮え立つ鼎の中で魚を養い、燃え盛る火の上に鳥を棲ませるようなものだ。火や土、湯や水はもともと魚鳥の生ずる所だが、用いる時を誤れば必ず焦げ爛れる。
- 今、土地は広くとも耕せず、民は多くとも食う所がない。小人どもが競い争い、呑み込んで飽きることがない。恐ろしいのは、ある日、役夫や困窮した職人が土木の現場から起こり、斧を投げ捨て腕を振るって高い所に登り大声で叫ぶことだ。そうなれば怨み苦しむ人々が狼のように跳ね虎のように騒ぎ、響き合って雲のように集まり、八方は分裂し中原は魚のように崩れる。一尺四方の銭でもこれは救えない。早く悟らなければ、その事態が現実になる、と。
- 帝はこれに従った。