- 要旨: 迦畢試国は雪山と黒嶺に囲まれた大国で、王は勇略に富み仏教を篤く保護し、多くの霊異が伝わると記す。
地理と統治
- 周囲四千余里、北は雪山、三方は黒嶺に囲まれ、大都城は周囲十余里とする。
- 穀物・麦を産し果樹が多く、良馬や欝金香を産し、異国の珍しい物資が集まるとする。
- 王は刹帝利種で知略に富み勇猛、近隣十余国を威圧し統治するが、仏教を篤く敬い、毎年丈八尺の銀仏像を造り無遮大会を催し貧民や寡婦を施したとする。
- 伽藍百余か所、僧徒六千余人が主に大乗の教えを学び、外道(異教徒)の修行者も千余人おり、その中には髑髏を連ねて冠とする者もいるとする。
質子伽藍の由来
- 大城東の伽藍は、健駄邏国の迦膩色迦王が葱嶺以東の諸国から人質を受け入れ、季節ごとに滞在地を変えさせた際、夏の滞在先として建てられた伽藍であるとする。
- 壁画には中華風の容姿・服装をした質子が描かれ、帰国後も供養が絶えず、今も安居の際に法会を開いて質子の冥福を祈る慣わしが続いているとする。
- 神王像の足下に埋められた財宝を狙った辺境の王が発掘しようとした際、神王の冠の鸚鵡像が羽ばたき鳴いて地震を起こし、撃退したという霊験譚を記す。
その他の霊異
- 伽藍北の山中の石室は質子が瞑想した場所とされ、財宝が薬叉神に守られ、盗掘者には猛獣の姿で威嚇するとする。
- 石室西の山頂には観自在菩薩像があり、至誠を尽くせば菩薩が姿を現すという言い伝えがあるとする。
- 曷邏怙羅僧伽藍の仏塔にまつわる、大臣遏邏怙羅が夢のお告げにより仏舎利を得て塔に納めたという逸話を記す。
- 阿路猱山が毎年山頂を高くしては崩れるという伝承や、雪山頂の池に住む龍にまつわる、阿羅漢の弟子であった沙弥が怨みから龍に生まれ変わり暴風雨で伽藍を破壊し続けたが、迦膩色迦王が龍と契約を結んで鎮めたという長大な説話を記す。
- 舎利が煙とともに現れ光を放って昇天したという奇瑞や、王城西北の旧王伽藍に伝わる釈迦の幼時の像、仏の頂骨・毛髪、旧王妃伽藍の仏塔の光明などの霊験を列挙する。
- 城西南の象堅山(比羅娑洛山)には、釈迦が神の供養を受けたという盤石の上に無憂王(アショーカ王)が建てた仏塔があるとし、その北の龍泉は釈迦や阿羅漢が楊枝を用いた地に木が茂り、後に鞞鐸佉伽藍が建てられたと伝える。