大宋中興通俗演義第六十九回 陰司にて岳飛、霊験を顕す (陰司中岳飛顯靈)

鬼神をめぐる問答

  • 臨安の王能・李直の二人は、岳飛父子が冤罪で死に一族が流刑になった一方、秦檜父子は栄達を極め報いを受けないことに憤り、鬼神は本当にあるのかと語り合う。
  • 李直は、忠義の士は死しても魂魄が散らず、冤罪で死んだ者は恨みを抱いて霊となると説き、『左伝』の言葉を引いて鬼神の実在を論じる。王能は音・形・気を伴う怪異の例を挙げて問い詰めるが、李直はいずれも「常の鬼神」ではなく、非業の死を遂げた者の怨念が異変を起こすのだと答える。

伍子胥廟への祈願

  • 二人は、諫言により讒言で殺された伍子胥の霊が岳飛の境遇と似ると考え、香を持って伍子胥廟に参り、秦檜を暗に指して奸臣への天罰を祈る祝文を捧げた。祝文は、権を弄び忠臣を陥れた者に天罰が下るよう訴える内容。
  • 祈願を終えた二人は血の涙を流すほど憤慨して退いた。

伍子胥の上奏と冥界の岳飛

  • 伍子胥の神霊はこれを聞いて憤り、天庭に上奏し岳飛父子の冤罪を訴える。
  • 冥界では岳飛・岳雲・張憲の三魂が首や縄を提げたまま訴える場もなく彷徨っていた。井戸に身を投げた銀瓶も冥府で父兄を捜し求め、四人は再会して抱き合い痛哭する。張憲は天帝に訴え奸賊の命を取るべきだと言う。
  • そこへ伍子胥の神霊が黒雲に乗って現れ、天庭にすでに訴え出たこと、秦檜の家系を絶やし夫婦ともに地獄に落とすこと、岳飛父子と張憲には来世で王爵と血食の栄誉を与えることを告げ、まずは奸賊に取り憑いて命を取るよう促す。

秦檜への祟り

  • 秦檜は徳格天楼で岳飛・岳雲・張憲・銀瓶の亡霊に襲われ、階段から突き落とされ気を失う。目覚めた秦檜は妻に一部始終を語り、以後は精神が乱れ、昼夜を問わず亡霊の幻聴幻影に苛まれるようになった。
  • 恐れをなした秦檜夫妻は、霊隠寺で仏事を営み罪業を懺悔して岳飛父子の魂を鎮めることを思い立ち、何立に車馬の支度を命じた。